銀座のはなし

きらいなチョコレートがいっぱい詰まったクリスマスツリーを私が好きそうだからって、買ってきてくれたんだ。一年。銀座にごはんを食べに行って幸せだなーって。一年。一年経ったいま、私は別の人に会いに銀座に行くんだ。去年は予想もしてなかったのにね。…

過ごすはなし

夢を追う素振りを見せるひとと傷ついてるのに一生懸命笑ってるひとと堅実で穏やかだけど欠落してるひととやんちゃな大人と可愛いこども会社にきちんと行って、帰ってきて、最低限の家事をする。誤魔化すために考えないように、ひとと会う。そういう忙しない…

帰る場所がないはなし

どこにも行けなくなった。遂に理由がなくなった。東京にきたのは彼についてきたからで、今の仕事に変えたのも彼との生活のためでそうじゃないならなんにも必要ない。息がずっと苦しいままだ。知ってる街を追われるように出て、知らない街にやってきたけれど…

すっかり変わっていってるはなし

私のすきだった人なら今はもうどんどん冷たくて酷い人になってる。彼に拓けたらしい未来とやらには私は甚だ疑問だけれどもあの子供みたいな笑顔ならそっちのそう、未来のほうを見つめてしまって、心配なんてもう、してくれないのだ。お互い確かめ合わずにき…

お金と関係性のはなし

そりゃ慰謝料なんて生涯誰にも要求しない人生がいい。慰謝料を請求しうるということは自分と相手だけじゃなく公共圏のありとあらゆる角度から見物しても「ああ、あの人、不当に傷付けられたな」っていう認識が発生するわけでしょう?それは恥ずかしいことで…

音と記憶のはなし

何年も一緒に暮らすともともと似通っていた音楽の趣味が更に似てきてしまって、どっちがどっちの趣味だったかわからなくなる。音にまつわる記憶が混在してきて、あの時のフェスで一緒に見てふたりで好きになって、帰りに余韻と寂しさの中で一緒にスマホ開い…

別れの体感時間のはなし

何年も一緒に過ごしてきたひとと離れることになった時のはなし。恋愛がおわって結婚がちらつき始めたころ、突然お別れすることになったはなし。きっも相手にとってはずいぶん考えてのことで、別れを切り出すまでに長い長い時間をかけて悩みつづけてだした結…

ぬかるみ

人生でいまが一等かなしくあってほしい。よくある悲劇のバリエーションのひとつとして、けれど私にとっては凄惨な記録として。あたたかくつめたく傷つけあう日々を。かなしいからあたまの中から手放したくて、なるべく書いておこうと。初期衝動はそんなとこ…