音と記憶のはなし

何年も一緒に暮らすと
もともと似通っていた音楽の趣味が更に似てきてしまって、
どっちがどっちの趣味だったかわからなくなる。

音にまつわる記憶が混在してきて、
あの時のフェスで一緒に見てふたりで好きになって、
帰りに余韻と寂しさの中で一緒にスマホ開いてCD買ったアーティストなんて
あれはどっち始まりになるのか。
 
そんな状態で別れることになったら
何を聴いても思い出すことが多すぎてiTunes触れなくなる。
音の悪いライブハウスやギターを爪弾く指先だけじゃなくて、
洗い物をした時に流れていたインストや
風呂場から聴こえた鼻歌なんかもそう。

そんなのをひとりになってからどうやって消化すればいいのか。
相手はどうやって消化しているのか。

何も考えずに昔みたいに
音そのままを楽しめるようになる日々は
今のところまだ想像つかない。